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INNOVATIONテフロン™発見と技術革新

テフロン™を産んだセレンディピティ

フッ素化学産業のパイオニアたるデュポンが、フレオン™(CFC)冷媒に続いて世に送り出した画期的なフッ素化学品こそ、いまや「台所から宇宙まで」広く社会に広がっているフッ素樹脂「テフロン™」です。
優れた化学的特性を持ち、今では「スーパー・エンジニアリング・プラスチック」と呼ばれるテフロン™は、フレオン™冷媒の研究の過程で、ふとした偶然(セレンディピティ)から誕生しました。その歴史を少し紐解いてみましょう。

テフロン™が誕生したのは1938年4月6日朝のことです。既に見たように、1930年代前半にはデュポンがフッ素を使った冷媒フレオン™(CFC)を世に送り出しており、デュポンではCFCに関する研究が盛んに行われていました。
1936年にデュポンに入社した若きロイ・プランケット博士は、新たな冷媒をつくる中間体として、炭素とフッ素からなる「テトラフルオロエチレン(略称TFE、分子式C2F4)」に注目します。TFEは気体状の単体分子(モノマー)です。エチレン(分子式C2H4)は炭素と水素からなりますが、4つの水素の代わりに4つの(テトラ)フッ素(フルオロ)と炭素で構成されています。
運命の日の前夜、当時26歳だったプランケット博士はTFEを50kgほど合成し、50本のボンベに充填してドライアイスの上に置き冷凍保存しておきました。翌日(4月6日)、博士が実験の続きをしようとボンベのバルブを開いてみると、奇妙なことが起こります。昨日充填したはずのTFEが出てこなかったのです。バルブはたしかに開いているし、パイプに異常があるわけでもない。重さを測ってみたところ、昨夜と変わりはない。ガス漏れしたわけでもなさそうです。
不思議に思った博士はボンベの蓋を開けてみましたが、何も出てきません。そこで今度はボンベを逆さにして振ってみると、白い粉上の物質が床に落ちてきました。興味を抱いた博士は助手と二人でボンベを金鋸で切断し、ボンベの中を覗いてみることにしました。
二人が見たのは、ボンベの内壁にびっしりと付着した白い蝋状(ワックス状)の物質です。残りのボンベも同じ状態です。博士はそれを見て、TFEのモノマーが重合してポリマーになったと確信します。そして、この重合したTFE(PTFE:ポリテトラフルオロエチレン)の性質を2日間にわたって調べることにしました。この粉状の物質こそ、後に「テフロン™」と呼ばれる物質です。
テフロン™発見のいきさつもドラマチックですが、その後の2日間で、博士がテフロン™の基本的な性質の多くを把握していたのも驚きです。熱に強く(耐熱性)燃えにくい(難燃性)、高濃度の酸やアルカリなどの薬品に強い(耐化学薬品性)、日光に強い(耐候性)ことなどです。

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広がるテフロン™の応用

プランケット博士はさらに、デュポン社内の高分子樹脂研究の専門家にPTFEのサンプルを送って意見を求めます。そこでは、PTFEの摩擦抵抗が非常に小さいことや、電気を通さない性質(絶縁性)が認められ、さらにはそれまで得られた高分子のなかで、もっとも化学的に安定であることが確認されました。こうした成果を踏まえ、デュポンは1941年にPTFEの特許を取得します。
優れた化学的性質を持っていたPTFEにも、産業応用に向けては弱点がありました。溶融成形が困難なこと、非粘着性が高く塗膜も困難なこと、さらには値段も非常に高価であったことです。材料としてのポテンシャルの高さは明らかでしたが、その扱いにくさゆえに工業化への道は険しいと見られていました。

そんな厳しい状況のなか、1941年にPTFEへの最初の発注が舞い込みます。発注元は、原子爆弾の製造を推進したマンハッタン・プロジェクトです。原爆製造に必要な放射性ウランの製造時には、きわめて腐食性の強いガスが放出されます。製造装置の配管や容器のライニングやパッキンは、こうした腐食に耐えうる物質でなければなりません。PTFEはその条件を満たす物質として採用されました。ほかにも、軍需用の特殊なシール材としてPTFEの利用が広がっていきます。
デュポンは1945年にPTFEを「テフロン™」の商標で登録出願し(商標は2015年にケマーズ社に移管)、第二次世界大戦後にはテフロン™が徐々に民間利用されるようになっていきます。きっかけは、テフロン™を層状にして金属に塗る技術の開発です。今やごく当たり前に見かける「テフロン™コーティングのフライパン」が1950年代後半には商品化され、料理をしても焦げ付きにくい特徴が爆発的なヒットにつながります。それは、テフロン™の耐熱性と非粘着性の高さゆえのことです。
さらには、テフロン™を加工するさまざまな技術も開発されるようになると、耐化学薬品性や絶縁性などテフロン™ならではの特性が評価され、幅広い分野で産業応用されるようになっています。1960年に発売した溶融成形が可能なテフロン™FEPや、1972年に発売したテフロン™FEPの耐熱性を高めたテフロン™PFAも、テフロン™の応用分野を広げています。

当社は1965年にテフロン™PTFEの製造を開始し、1980年代後半には、テフロン™のフルラインナップを国産化しました。デュポンがPTFEを発見して以来、当社は国内で唯一テフロン™の研究・製造を行っている企業として蓄積してきたテフロン™の製造・加工技術に加え、当社はお客様のニーズにあわせ、国内独自のきめ細やかな品質改良にも努めています。

フッ素樹脂テフロン™事業・
製品のあゆみ

DISCOVERY

フッ素化学の夜明け前フッ素の発見

1771

カール・シェーレが蛍石から未知の酸性物質(フッ化水素)が発生することを発見。

1886

アンリ・モアッサンがフッ素の単離に成功。この功績により1906年にノーベル賞を受賞。

DEVELOPMENT

米国DuPontによるテフロン™の発見~工業化

1930

フレオン™(フロン)販売開始

1938

プランケット博士がPTFEを発見

1945

PTFEを「テフロン™」の商標で登録出願

1947

テフロン™塗料 販売開始

1960

テフロン™加工のフライパン誕生

HISTORY

弊社 テフロン™製品のあゆみ

1963

会社設立

  • 米国デュポン社と日東化学工業(株)の合弁会社として日東フロロケミカル(株)(現:三井・ケマーズ フロロプロダクツ)設立
  • テフロン™PTFE販売開始

1964

1965

清水工場・技術サービス研究所竣工

  • テフロン™の国内生産を開始

1973

1976

1985

1989

2000

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